このことわざの“地”って?
Q:「雨降って地固まる」の“地”とは何を指しているでしょう?
A:
- 水たまりのあるぬかるんだ地面
- 人の心や人間関係の比喩
- 建築前の地盤工事の話
──答えは、記事の中で。
あの雨の日を、思い出す
65歳の男性が、ある写真を見ながら懐かしそうに目を細めた。 そこには、30年前の自分と、幼い息子が傘もささずに濡れて笑っている姿。
あの日は、まさに嵐のような日だった。 仕事で大きな失敗をして、家に帰るのも気が重くて。 それでも、息子の無邪気な笑顔が、少しだけ救いになった。
今、その日のことを思い出すたびに浮かぶ言葉がある。
雨降って地固まる
若い頃は「うまくまとめようとする慰め言葉」くらいにしか思っていなかった。 でも年齢を重ねたいま、ようやくその意味の深さに気づきはじめていた。
崩れたからこそ、築けたもの
彼の人生には、何度も“雨”が降った。
父の死。 会社での左遷。 妻とのすれ違い。
そのたびに、気持ちは沈み、将来が見えなくなった。
けれど──そのあと必ず、「固まった地」があったのだ。
父を失ったあと、母との絆が深まった。 左遷された部署で、生涯の親友と出会った。 妻とぶつかったあとの夜、静かに話し合って、心が少し近づいた。
悲しみや混乱の“雨”が去ったあとの地面は、 それまでよりもしっかりと彼の足を支えてくれていた。
崩れることは、悪いことではない。 崩れたからこそ、本当に大事なものが残った。
今ではそう思えるようになった。
雨を恐れず、生きていく
70代になった彼は、今もたまに“雨”に出会う。
健康診断での不安な結果。 長年の友の訃報。 やりたいことができない日々。
でも、かつてのように怖がらなくなった。 むしろ、こう思うようになった。
また、地が固まるチャンスかもしれない。
“雨”は、変化のサイン。 不安を乗り越えたあとに、 きっとまた、歩きやすい地面ができる。
そしてそれは、過去の雨が教えてくれたことだった。
「雨の日にこそ、空を見上げるようになったなぁ」 と、彼は小さく笑った。
あとがき── あなたの地面も、きっと固まっていく
「雨降って地固まる」
この言葉は、決して気休めではない。
苦難のあとに、もっと強くなれる。 崩れても、また築けばいい。
そんな人生の真実を、そっと教えてくれる。
今、もしも“雨”の中にいるなら、 そのままでもいい。
やがてきっと、 あなたの足元に、しっかりとした“地”ができている。
そしてその地面は、前よりもきっと、 強く、優しく、あたたかくなっているはずです。
──それが、年を重ねたあなたに訪れる、 静かで確かな贈り物。