試験に落ちた、仕事で失敗した、人間関係がうまくいかなかった──誰もが人生で何度も転ぶ経験をします。そんな時、立ち上がる勇気をくれるのが「七転び八起き」という言葉です。
この日本の古いことわざは、何度失敗しても諦めずに立ち上がる大切さを教えてくれます。でも、頭ではわかっていても、実際に立ち上がるのは簡単なことではありません。心が折れそうな時、どうやって前を向けばいいのでしょうか。
今回は、この力強い言葉の本当の意味と、現代を生きる私たちがどう実践していけばいいのかを、じっくり考えていきたいと思います。
名言の基本情報
ことわざ: 七転び八起き(ななころびやおき)
英語表現: Fall seven times, stand up eight
意味: 何度失敗しても諦めずに立ち上がり、挑戦し続けること
このことわざの起源は江戸時代以前にまで遡るとされ、日本人の粘り強さや不屈の精神を象徴する言葉として、長く親しまれてきました。数字の「七」と「八」は具体的な回数というより、「何度でも」という意味を強調するための表現です。
面白いのは、転ぶ回数より起き上がる回数の方が一つ多いという点です。これは最後は必ず立ち上がった状態で終わるという、前向きなメッセージを含んでいます。つまり、このことわざは単に「頑張れ」というだけでなく、「最終的には必ず立ち直れる」という希望も伝えているんですね。
なぜ立ち上がることがこんなにも難しいのか
理屈ではわかっていても、実際に失敗から立ち直るのは本当に大変です。それはなぜでしょうか。
まず、失敗は私たちの自尊心を深く傷つけます。「自分はダメな人間だ」「能力がない」と、失敗そのものではなく自分という人間を否定してしまうんですよね。SNSで他人の成功ばかりが目に入る現代では、この傷つきはさらに深くなっているかもしれません。私自身も、大きな失敗をした後は、周りの人がみんな自分を笑っているような気がして、外に出るのも怖かった時期がありました。
次に、失敗への恐怖が次の行動を妨げます。一度転ぶと、「また失敗したらどうしよう」という不安が大きくなり、新しいことに挑戦できなくなってしまう。これは心理学で言う「学習性無力感」に近い状態です。失敗体験が重なると、「何をやってもうまくいかない」という思考パターンが染み付いてしまうのです。
さらに、現代社会は失敗に対して厳しい一面があります。SNSでの炎上、一度の失言が永遠に記録される時代、完璧を求められる職場環境──こうした中では、失敗することへの心理的ハードルが高くなるのも当然です。でも、だからこそ「七転び八起き」の精神が、今こそ必要なのかもしれません。
立ち上がる力を育てる考え方の転換
では、どうすれば何度でも立ち上がれる心の強さを育てられるのでしょうか。いくつかの視点の転換をご紹介します。
一つ目は、失敗と自分を切り離すことです。失敗したのは「あなたという人間」ではなく、「今回の方法や状況」です。「私は失敗した」ではなく「この方法はうまくいかなかった」と考える。たったこれだけの言い換えで、心の負担が驚くほど軽くなります。発明王エジソンの有名な言葉「失敗ではない。うまくいかない方法を発見しただけだ」も、同じ発想ですよね。
二つ目は、小さな成功体験を積み重ねることです。大きな失敗の後にいきなり大きな挑戦をするのは無謀です。まずは確実にできる小さなことから始めて、「できた」という感覚を取り戻していく。これが自信を回復させる近道です。私の友人は、仕事で大きなミスをした後、毎朝の掃除や整理整頓など、確実にこなせることから始めて、少しずつ心を立て直していったそうです。
三つ目は、失敗を学びの機会と捉えることです。失敗からは、成功からは得られない貴重な教訓が得られます。「なぜうまくいかなかったのか」「次はどう改善できるか」を冷静に分析することで、失敗は成長の糧になります。スポーツ選手が試合のビデオを見返して反省するように、自分の失敗を客観的に振り返る習慣をつけると、同じ失敗を繰り返さなくなります。
転んだ後の正しい立ち上がり方
立ち上がる「意志」は大切ですが、それだけでは不十分です。正しい立ち上がり方を知ることも重要です。
まず、すぐに立ち上がろうとしないことが意外にも大切です。転んで怪我をしたら、まず傷の手当てをしますよね。心も同じです。失敗直後は心が傷ついている状態なので、無理に前向きになろうとせず、まずは休むこと。自分の感情を否定せず、「悲しい」「悔しい」という気持ちを認めてあげる。この「回復期間」を大切にすることで、本当の意味で立ち上がる力が湧いてきます。
次に、一人で抱え込まないことです。信頼できる家族や友人に話を聞いてもらうだけでも、心は軽くなります。私も以前、仕事で大きな失敗をした時、恥ずかしくて誰にも言えずにいたのですが、思い切って先輩に相談したら「私も若い頃、同じような失敗をしたよ」と言われて、すごく救われたんです。失敗は恥ずかしいことではなく、誰もが経験する通過点なのだと、その時実感しました。
そして、小さな一歩から再スタートすることです。いきなり全速力で走り出す必要はありません。ゆっくりでいいから、確実に前に進む。昨日より今日、今日より明日、少しずつでも前進していれば、それは立派に「立ち上がっている」状態なのです。
現代社会での応用と実践例
「七転び八起き」の精神は、現代のさまざまな場面で活かすことができます。
仕事の場面では、プロジェクトの失敗や営業成績の低迷など、転ぶ機会はたくさんあります。でも、失敗を恐れて新しい提案をしなくなったり、チャレンジを避けたりすると、成長は止まってしまいます。大切なのは、失敗を次に活かすPDCAサイクルを回すこと。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)を繰り返すことで、失敗は確実に次の成功につながっていきます。
学習の場面では、資格試験や語学学習で挫折を経験することもあるでしょう。でも、一度不合格になったからといって諦める必要はありません。むしろ、「自分の弱点がわかった」と前向きに捉えて、勉強方法を見直すチャンスです。私の知人は、司法試験に三度落ちた後、四度目で合格しました。彼女は「前の三回は、合格するために必要な学びの時間だった」と振り返っています。
人間関係においても、この精神は役立ちます。友人とのすれ違い、恋愛での失恋、職場での人間関係の悩み──こうした経験から学んだことは、次の関係をより良いものにしてくれます。人は関係の中で転び、関係の中で立ち上がるのです。一度うまくいかなかったからといって、人との繋がりを諦めてしまうのはもったいないですよね。
この言葉が教えてくれる人生の真実
「七転び八起き」が本当に伝えたいのは、完璧を目指すことではなく、諦めないことの大切さだと思います。
人生には失敗がつきものです。むしろ、失敗しない人生なんて存在しません。大切なのは、転ばないことではなく、転んだ後にどうするか。そこにこそ、その人の本当の強さが現れるのではないでしょうか。
また、この言葉には「八回目は必ず起き上がる」という、未来への希望が込められています。今、どんなに辛い状況にあっても、それは永遠には続きません。必ず立ち上がれる時が来る。そう信じる力が、この言葉にはあります。
私自身、人生で何度も転んできました。そのたびに「もうダメかもしれない」と思いながらも、なんとか立ち上がってきました。振り返ってみると、転んだ経験のすべてが、今の自分を形作る大切な要素になっているんですよね。転んだからこそ見えた景色、転んだからこそ出会えた人、転んだからこそ学べたこと──それらすべてが、人生を豊かにしてくれています。
完璧な人生なんて目指さなくていい。転んでもいい。大切なのは、何度でも立ち上がる勇気を持ち続けること。それが、この言葉が私たちに伝える、最も大切なメッセージなのだと思います。
まとめ
「七転び八起き」は、単なる根性論ではありません。失敗を恐れず、失敗から学び、何度でも前を向く──そんなしなやかな強さを教えてくれる言葉です。
人生という長い旅の中で、転ぶことは避けられません。でも、転ぶたびに何かを学び、少しずつ強くなっていく。そして最後は必ず立ち上がった状態でいる。それが、この言葉が示す理想の生き方なのではないでしょうか。
今、もし転んで立ち上がれずにいる方がいたら、焦らなくて大丈夫です。ゆっくり深呼吸をして、周りを見渡してみてください。あなたを支えてくれる人、学びになる教訓、そして未来への希望が、きっと見つかるはずです。
何度転んでも、もう一度立ち上がる。その一歩が、あなたの人生をより強く、より豊かにしてくれます。

