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女性リーダーが生まれるとき世界の変革を学ぶ

シニア夫婦黒人、孫娘、公園散歩 保守政治と国家論
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「なぜ日本には女性リーダーが少ないのか」――この問いに、あなたはどう答えますか。能力の問題?意欲の問題?それとも、社会構造の問題でしょうか。

ジャーナリスト・野村浩子氏の『女性リーダーが生まれるとき』は、世界の女性リーダーたちを取材し、彼女たちがどのように困難を乗り越え、トップに上り詰めたかを丁寧に描いたルポルタージュです。ドイツのメルケル首相、ニュージーランドのアーダーン首相、台湾の蔡英文総統。世界で活躍する女性リーダーたちの共通点と、彼女たちを生み出した社会の仕組みが、具体的に示されています。

この本が示すのは、女性リーダーの不在は「女性の問題」ではなく、「社会の問題」だということです。制度、文化、無意識のバイアス。様々な障壁が、優秀な女性たちの可能性を閉ざしてきました。しかし同時に、この本は希望も示してくれます。適切な制度と意識改革があれば、変化は可能なのだと。

書籍の基本情報

  • 書籍名: 女性リーダーが生まれるとき
  • 著者: 野村浩子(のむら・ひろこ)
  • 出版社: 光文社(光文社新書)
  • 発行年: 2014年
  • ページ数: 約280ページ
  • ジャンル: 保守政治と国家論、ジェンダー論、国際政治、ルポルタージュ

著者の野村浩子氏は、ジャーナリストとして長年、政治やジェンダー問題を取材してきました。海外での取材経験も豊富で、日本と世界の女性リーダーの状況を比較する視点が、本書の大きな特徴となっています。現場取材に基づいた具体的なエピソードが、説得力を持って語られます。


世界の女性リーダーに学ぶ成功の条件

野村氏が本書で最初に示すのが、世界で活躍する女性リーダーたちの実像です。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、科学者出身で、冷静な判断力と危機管理能力で知られました。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、若くして母となりながら、共感力のあるリーダーシップを発揮しました。

こうした女性リーダーたちに共通するのは、決して「男性的」になったわけではないということです。むしろ、女性ならではの視点や感性を活かしながら、リーダーシップを発揮しています。協調性、共感力、丁寧なコミュニケーション。こうした特性が、現代のリーダーシップには不可欠だと、野村氏は指摘します。

興味深いのは、女性リーダーを生み出す国には、共通する制度的基盤があることです。クオータ制(一定割合の女性枠確保)、育児支援の充実、男性の育児参加促進。こうした社会システムの整備が、女性の政治参加を後押ししているのです。

また、女性リーダーの多くが、メンター(助言者)の存在を重視していることも明らかにされます。先輩女性の助言、男性の理解者のサポート。一人で闘うのではなく、支え合うネットワークが、女性のキャリアアップを支えてきました。

野村氏の取材は、単なる成功談ではありません。女性リーダーたちが直面した困難――性差別、偏見、家庭との両立の苦悩――も率直に描かれます。しかし、彼女たちはそれを乗り越えました。その過程を知ることで、読者は「自分にもできるかもしれない」という勇気をもらえるのです。


日本の女性リーダー不在の構造的要因

本書の重要な部分が、日本における女性リーダー不在の分析です。野村氏は、これが単に「女性の意欲が低い」という問題ではないことを、データと取材で示します。

日本の政治における女性議員の割合は、先進国の中で最低レベルです。企業の女性管理職比率も同様に低い。しかし、野村氏が指摘するのは、これは女性個人の問題ではなく、社会構造の問題だということです。

第一に、長時間労働と育児の両立困難。日本の政治家や経営者は、長時間の会議や深夜までの付き合いが当たり前です。育児の主担当が女性である社会では、これは大きな障壁になります。海外では、会議は夕方までに終わらせ、夜は家族との時間を優先する。こうしたワークライフバランスの文化が、女性の参加を可能にしているのです。

第二に、男性中心の組織文化。日本の政治や企業は、長年、男性だけで運営されてきました。その結果、女性にとって入りにくい雰囲気、暗黙のルール、男性的な価値観が支配しています。こうした無意識のバイアスが、女性を排除してきたのです。

第三に、ロールモデルの不在。女性リーダーが少ないから、若い女性は「自分がなれる」と想像できない。この悪循環を断ち切るには、意図的に女性リーダーを増やす必要があると野村氏は主張します。

野村氏の分析は、決して日本社会を一方的に批判するものではありません。むしろ、「変えられる」という希望を示しています。制度を変え、意識を変えれば、日本にも女性リーダーは生まれる。その可能性を、具体的に示してくれるのです。


クオータ制の効果と日本への示唆

本書で詳しく論じられるのが、**クオータ制(割当制)**の効果です。ノルウェーやフランスなど、多くの国が議会や企業役員に一定割合の女性枠を設けています。これに対して、「能力ではなく性別で選ぶのは逆差別だ」という批判もあります。

しかし、野村氏が取材した国々では、クオータ制は成功していました。最初は「枠で入った」女性も、実力を発揮し、組織に貢献する。そして、女性がいることが当たり前になると、もはやクオータ制は不要になる。つまり、クオータ制は**一時的な「呼び水」**なのです。

興味深いのは、女性が増えることで、組織全体のパフォーマンスが向上するという研究結果です。多様な視点があることで、意思決定の質が上がる。画一的な組織より、多様な組織の方が、イノベーションが生まれやすいのです。

日本でも、一部の自治体や企業がクオータ制的な取り組みを始めています。野村氏は、こうした動きを紹介しながら、日本でも実現可能だと主張します。ただし、制度だけでなく、育児支援や働き方改革など、総合的な取り組みが必要だとも指摘します。

また、クオータ制への批判に対しても、野村氏は丁寧に答えます。「能力で選ぶべきだ」という意見は正しい。しかし、現状は「能力」ではなく「性別」で排除されている。だからこそ、一時的に是正措置が必要なのだと。この論理は、多くの読者に「なるほど」と思わせる説得力があります。


女性の視点が政治を変える力

野村氏が強調するのが、女性リーダーが政治に新しい視点をもたらすということです。これは、女性が男性より優れているという話ではありません。異なる経験、異なる視点があることの価値です。

例えば、育児や介護の問題。これらは長年、「女性の問題」として軽視されてきました。しかし、女性議員が増えることで、こうした問題が政治課題として取り上げられるようになります。待機児童問題、介護離職問題。これらは、社会全体の問題であり、女性の視点が解決の鍵になるのです。

また、女性リーダーは、平和や教育、社会福祉といった分野を重視する傾向があるという研究もあります。もちろん個人差はありますが、女性ならではの価値観が、政治の優先順位を変える可能性があるのです。

野村氏が紹介する各国の事例では、女性リーダーの登場が、政治の質を向上させたケースが多く見られます。対話を重視する、弱者に配慮する、長期的視点を持つ。こうした包摂的なリーダーシップが、社会の分断を癒し、持続可能な発展につながると。

これは、保守政治と国家論の文脈でも重要な視点です。強いリーダーシップとは、力で押すことではなく、多様な声を聞き、社会をまとめる力。その意味で、女性リーダーの登場は、政治の成熟を示すものなのです。


次世代の女性リーダーを育てるために

本書の最終章では、これから女性リーダーを目指す人へのメッセージが語られます。野村氏が取材した女性リーダーたちが、後輩に伝えたいこととは何か。

第一に、「自分の可能性を信じること」。社会の偏見や周囲の反対に負けず、自分がやりたいことを追求する。女性だからという理由で諦めない。この自己信頼が、すべての出発点です。

第二に、「メンターを見つけること」。一人で闘うのは難しい。先輩の助言、同志の励まし、理解者のサポート。こうしたネットワークを築くことが、長い道のりを支えてくれます。

第三に、「完璧を目指さないこと」。女性は、男性以上に完璧を求められがちです。しかし、完璧な人などいない。失敗しながら学ぶ、助けを求める。そうした人間らしさを認めることが、持続可能なキャリアにつながります。

また、男性の役割についても語られます。女性リーダーを増やすには、男性の意識改革も不可欠です。育児に参加する、女性の昇進を支持する、無意識のバイアスに気づく。男女が協力して、社会を変えていく必要があるのです。

野村氏のメッセージは、決して説教臭くありません。むしろ、「一緒に変えていこう」という温かい呼びかけです。女性だけでなく、男性も、若者も、すべての人が関わる問題として、女性リーダーの登場を捉える。その視点が、この本の大きな魅力なのです。


現代社会での応用・実践

では、『女性リーダーが生まれるとき』から得た学びを、どう日々の生活に活かせばいいでしょうか。

まず、無意識のバイアスに気づくこと。「女性は〇〇が苦手」「リーダーは男性的であるべき」。こうした思い込みを、自分の中に見つけたら、それを問い直してみる。固定観念が、可能性を狭めていないか、常に自問することが大切です。

次に、女性のキャリアを応援すること。職場で、家庭で、地域で。女性が能力を発揮できる環境を作る。男性が育児に参加する、女性の昇進を後押しする。こうした小さな行動の積み重ねが、社会を変えていきます。

また、ロールモデルになること、見つけること。すでにリーダーシップを発揮している女性は、後輩の道を照らす存在になる。これからリーダーを目指す人は、先輩の姿に学ぶ。このつながりが、女性リーダーを継続的に生み出す基盤になります。

さらに、制度改革を支持すること。クオータ制、育児支援、働き方改革。こうした政策を、選挙で支持する。企業の取り組みを評価する。制度は、一人ひとりの声が集まって変わるものです。

最後に、娘や息子に、可能性は無限だと伝えること。「女の子だから」「男の子なんだから」という制限をかけない。性別に関係なく、夢を追求できる。そのメッセージを、次世代に伝えていきましょう。


どんな方に読んでもらいたいか

『女性リーダーが生まれるとき』は、ジェンダー平等に関心のあるすべての人に読んでいただきたい一冊です。

まず、キャリアを目指す女性には必読です。海外の女性リーダーたちがどう困難を乗り越えたか。その具体的なエピソードは、自分のキャリアを考える上での参考になります。「私にもできる」という勇気をもらえるはずです。

管理職や経営者の方々にも。組織に女性リーダーを増やすには、どんな制度や文化が必要か。本書は、具体的な施策のヒントを与えてくれます。ダイバーシティ推進の実践書としても優れています。

政治に関心がある方、政治家を目指す方にも。世界の女性政治家たちの成功例と、日本の課題。政治におけるジェンダー平等を考える上で、重要な視点が得られます。

また、娘や息子を持つ親御さんにも読んでほしい内容です。次世代が性別に関係なく活躍できる社会を作るために、今何ができるか。子育てのヒントも、この本には含まれています。

そして、「女性の問題は関係ない」と思っている男性にこそ読んでほしいのです。これは女性だけの問題ではなく、社会全体の問題だから。男性の理解と協力なしには、変化は起こりません。


関連書籍5冊紹介

女性リーダーシップやジェンダー平等について、さらに理解を深めるための書籍を紹介します。

1. 『LEAN IN 女性、仕事、リーダーへの意欲』(シェリル・サンドバーグ著、日本経済新聞出版)

フェイスブックCOOによる、女性のリーダーシップ論。**「一歩踏み出す勇気」**の重要性を説く世界的ベストセラー。野村氏の本と併せて読むことで、実践的なヒントが得られます。

2. 『無意識のバイアス』(北村英哉、唐沢穣編著、有斐閣)

心理学の視点から、無意識の偏見を分析。なぜ女性リーダーが生まれにくいのか、心理的メカニズムを理解できます。ジェンダーバイアスの本質を学問的に学ぶために。

3. 『日本の分断 切り離される非大卒若者たち』(吉川徹著、光文社新書)

ジェンダーだけでなく、学歴や世代による分断を論じる。女性リーダー問題を、より広い社会構造の問題として捉える視点が得られます。

4. 『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、筑摩書房)

韓国の小説だが、女性が直面する様々な差別を描いた作品。フィクションだからこそ伝わる、女性の生きづらさの実感。多くの女性が「これは私の話だ」と共感した世界的ベストセラー。

5. 『上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?』(上野千鶴子、小笠原文雄著、朝日新聞出版)

フェミニスト社会学者と在宅医の対談。女性の老後、一人暮らし、ケアの問題を論じます。女性のライフコース全体を考える上で示唆に富む内容です。


まとめ

『女性リーダーが生まれるとき』は、世界の女性リーダーたちの実例を通して、日本社会が変わる可能性と方向性を示した希望の書です。野村浩子氏の丁寧な取材と分析は、女性リーダー不在が個人の問題ではなく、社会構造の問題であることを明確にしています。

この本が教えてくれるのは、変化は可能だということです。適切な制度、意識改革、そして一人ひとりの行動。それらが組み合わさることで、女性リーダーは必ず生まれるのです。世界の成功例は、それを証明しています。

また、女性リーダーの登場は、女性のためだけではありません。多様な視点が政治や経済に入ることで、社会全体がより良くなる。誰にとっても住みやすい社会を作るために、女性リーダーは必要なのです。

保守政治と国家論の文脈でも、この本は重要な視点を提供します。強い国家とは、すべての国民の能力を活かせる国家です。女性という人口の半分の力を活かせない国は、国際競争で勝てません。ジェンダー平等は、国家戦略でもあるのです。

もしあなたが、女性リーダーを目指しているなら。もしあなたが、組織でダイバーシティを推進しているなら。もしあなたが、より良い社会を作りたいと思っているなら。この本を手に取ってみてください。きっと、行動するためのヒントと勇気を与えてくれるはずです。

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