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【鈴木一人】地経学で読み解く未来を照らす国際政治学者

赤ちゃんとオランウータン 国家安全保障論の著者
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経済が武器となる時代。そんな現代を読み解く鍵を提供してくれるのが、東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏です。宇宙開発から経済安全保障まで、幅広い分野で研究を重ね、2022年には地経学研究所の所長に就任。

国連安保理の専門家パネル委員として国際政治の最前線で活躍し、宇宙基本法の策定にも深く関わってきました。研究室と政策現場を行き来しながら、難解な国際情勢を私たちにわかりやすく伝え続ける鈴木氏。

その姿勢には、学問を社会のために役立てたいという強い使命感が感じられます。「問題を解決する上で何をなすのが最善か」という結果志向のマインドで挑み続ける鈴木氏の人生には、不確実な時代を生きる私たちへの希望が詰まっています。


著者の基本情報

  • 氏名(ふりがな): 鈴木一人(すずき かずと)
  • 生年月日: 1970年10月13日
  • 学歴: 立命館大学国際関係学部中退、同大学院国際関係研究科修士課程修了、サセックス大学ヨーロッパ研究所博士課程修了(現代ヨーロッパ研究専攻)
  • 経歴: 2000年筑波大学専任講師、2005年同助教授、2007年同准教授、2008年北海道大学公共政策大学院准教授、2011年同教授、2012年北海道大学大学院法学研究科教授、2015年北海道大学公共政策大学院教授、2020年東京大学公共政策大学院教授、2013-2015年国連安保理イラン制裁専門家パネル委員、2022年地経学研究所(IOG)所長
  • 現職: 東京大学公共政策大学院教授、地経学研究所所長、内閣府宇宙政策委員会委員、日本成長戦略会議有識者メンバー
  • 専門: 国際政治学、国際政治経済学、EU研究、科学技術と安全保障、安全保障貿易管理、国連制裁
  • 紹介文: 長野県上田市出身。高校時代に渡米し、カリフォルニアで学ぶ。2012年『宇宙開発と国際政治』でサントリー学芸賞受賞。宇宙政策、経済安全保障、地経学の第一人者として、理論と実践の両面から日本の安全保障政策に貢献。ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』日本語吹き替え版の監修も務める幅広い活動で知られる。

宇宙から地経学へ 研究の広がりと深まり

鈴木氏の研究の軌跡は、まさに時代のニーズを先取りしたものでした。当初、欧州統合に関心を持っていた鈴木氏が宇宙政策に出会ったのは、偶然の出会いからでした。グローバル化と科学技術の交差点という視点で欧州を研究する中、宇宙政策というテーマに辿り着いたのです。

当時、日本の宇宙開発研究は理系の専門家が中心で、「宇宙開発が分かる政治学者」は類を見ない存在でした。鈴木氏は、宇宙への憧れではなく、国際政治と科学技術という学問的関心から宇宙政策を研究し始めたのです。そして2011年に出版した『宇宙開発と国際政治』は、宇宙システムを「ハードパワー」「ソフトパワー」「社会インフラ」という三つの概念で整理した画期的な研究として、サントリー学芸賞を受賞しました。

その後、鈴木氏の研究は半導体、AI、資源など、より広い分野へと展開していきます。そして2022年、地経学研究所の所長に就任。経済が武器化する時代において、地政学と経済安全保障を融合した「地経学」という新しい視点を提示し続けています。2025年9月に出版された『地経学とは何か』は、まさにその集大成といえるでしょう。


理論と実践をつなぐ架け橋として

鈴木氏の大きな特徴は、研究と政策実践の両方に深く関わってきたことです。2008年の宇宙基本法の策定プロセスに専門家として参加し、2013年から2015年には国連安保理イラン制裁専門家パネル委員として、国際政治の最前線で活躍しました。

国連での経験について、鈴木氏自身は「事実上、若手の外交官として働いていたような感じ」と振り返っています。安全保障理事会や経済社会理事会での会議に出席し、レポートを書く。明石康氏(のち国連事務次長)の連絡役を務める。こうした実務経験は、鈴木氏の研究に深い現実感をもたらしました。

「問題を解決する上で何をなすのが最善か」という結果志向のマインド。それが鈴木氏の一貫した姿勢です。自らを「政治家や官僚の道具として政策に権威漬けをする御用学者ではなく、彼らと一緒に政策を作っていく政策志向の研究者」と位置づける鈴木氏。理論だけでは現実は動かない。しかし、実践だけでは長期的な視野を失ってしまう。この二つを結びつける架け橋として、大学の研究室と政府の会議室を行き来する姿は、研究者の新しい在り方を示しています。


現代社会に必要な地経学的思考

鈴木氏が近年力を入れているのが「地経学」という考え方です。地政学と経済安全保障を融合したこの概念は、まさに現代を生きる私たちに必要な視点といえます。

自由貿易とグローバル化が終わりを告げ、トランプ関税、中国のレアアース制裁など、経済が武器化する時代が到来しました。2010年の尖閣諸島沖での漁船衝突事件の際、中国が日本へのレアアース輸出を停止したことは、多くの日本人に衝撃を与えました。経済的な手段が政治的圧力の道具となる。これが地経学的パワーの現実です。

鈴木氏は、この危機を乗り切るために必要なのが「戦略的自律性」だと説きます。サプライチェーンの多元化、先端技術への投資拡大、素材や工作機械など「モノ作りの上流」での技術優位の維持。こうした取り組みを通じて、日本が他国にとって「不可欠な存在」となることが重要だというのです。

これは私たちの日常生活とも無関係ではありません。スマートフォン、電気自動車、再生可能エネルギー。これらすべてが、実は地経学の視点なしには理解できない時代になっているのです。鈴木氏の研究は、遠い世界の話だと思っていた国際政治が、実は私たちの暮らしと密接に関わっていることを教えてくれます。


ここで少し視線を休めてみてください


次世代へのメッセージと人生哲学

鈴木氏の人生観で印象的なのは、「政策志向な研究者は、なろうとしてなるべきではない」という言葉です。自分の突き詰めるべき問いを、アイデアとして積極的に世間に発信し、それが評価された結果として今の姿がある。政策志向な学者という生き方は、あくまで答えの無い政策課題への解を出すための一つの手段であり、それ自体は目的ではない。

また、「他の人の議論やアイデアを参考にしたり、学んだりすることは必要だが、最後は『自分の答え』でないと説得力は生まれない」とも語っています。冷戦期や高度経済成長期のような政策輸入の時代を超えて、私たちは答えのない政策課題に対して答えを出すことを求められる時代に生きている。そんな時代に新しいアイデアを提供できるのは、過去のイメージや固定観念を持っていない若手研究者だというのです。

鈴木氏自身の研究スタイルも、この哲学を体現しています。宇宙、EU、経済安全保障、地経学。一見バラバラに見えるテーマですが、その根底には「グローバルとナショナルの間にある科学技術」という一貫した問題意識があります。時代のニーズに応じて研究対象を柔軟に変えながらも、自分の問いを追求し続ける。そんな姿勢こそが、鈴木氏の強さなのです。


代表書籍紹介

1. 『地経学とは何か─経済が武器化する時代の戦略思考─』(新潮社、2025年)

2025年9月に出版された最新作です。地政学に経済安全保障の概念を取り入れた「地経学」を包括的に解説した入門書として、経団連のシンクタンクでの講演をベースにしています。半導体、宇宙、資源、AI、ITなど多様な視点から、デジタル技術が変える国際秩序を明快に説明。トランプ関税や中国のレアアース制裁など、現代の危機を理解するための必読書です。

2. 『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2011年)

第34回サントリー学芸賞を受賞した鈴木氏の代表作です。国際政治における宇宙開発を、ハードパワー、ソフトパワー、社会インフラという三つの概念で分析した画期的な研究。宇宙政策の第一人者としての地位を確立した一冊で、今なお多くの研究者や政策立案者に読み継がれています。専門的でありながらも読みやすく、宇宙と政治の関係を「わかる!」と感じられる内容です。

3. 『経済安全保障と技術優位』(勁草書房、2023年、西脇修氏と共著)

経済安全保障という新しい安全保障の概念を、技術優位という視点から論じた重要な著作です。AI、量子技術、ロボティクスなど、軍民両用技術をめぐる国際競争の実態を分析し、日本が取るべき戦略を提示しています。技術と安全保障の交差点を理解するための必読書です。

4. 『バイデンのアメリカ その世界観と外交』(東京大学出版会、2022年、佐橋亮氏と共著)

バイデン政権の外交政策を多角的に分析した共著です。トランプ政権からバイデン政権への転換期における米国の世界観と外交戦略を、経済安全保障の視点も交えて考察。米中関係、同盟政策、技術覇権競争など、現代の国際関係を理解する上で欠かせない視点が詰まっています。

5. 『EUの規制力』(日本経済評論社、2012年、遠藤乾氏と共編)

EUの規制政策を多角的に分析した共編著です。欧州統合における規制の役割を、環境、食品安全、個人情報保護など様々な分野から考察。グローバル化する経済の中で、EUがどのように規制を通じて影響力を行使しているかを明らかにした重要な研究です。鈴木氏のEU研究者としての一面を知ることができる一冊です。


まとめ 時代を読み解く知恵と実践力

鈴木一人氏の人生と研究は、理論と実践の両立、そして時代のニーズに応える柔軟性を教えてくれます。宇宙政策から地経学へ。一見大きな転換に見えますが、その根底には「グローバルとナショナルの間にある科学技術」という一貫した問題意識があります。

2026年現在、世界は経済が武器化する時代を迎えています。トランプ政権の関税政策、半導体をめぐる米中対立、サプライチェーンの再編。私たちを取り巻く環境は刻一刻と変化しています。そんな複雑な時代において、鈴木氏のような研究者の存在は、羅針盤のように私たちを導いてくれます。

「問題を解決する上で何をなすのが最善か」という結果志向のマインド。理論だけでなく、実践の現場で培った知見。そして難解な国際情勢を、私たち一人ひとりにわかりやすく伝えようとする姿勢。鈴木氏の生き方は、研究者だけでなく、様々な分野で働く私たちにとっても、大切な指針となるはずです。

経済が武器となる時代。しかし、それは絶望の時代ではありません。地経学という新しい視点を持つことで、私たちは複雑な現実を理解し、より良い未来を築いていくことができる。


鈴木一人氏の研究と実践が教えてくれる、そんな希望のメッセージを胸に、私たちも明日を生きていきたいものです。


ここまで、時間を分けてくださり、ありがとうございます。
もし、まだ少しだけ余白が残っているなら。
もうひとつの視点を。


いづれかの言葉が、ゆっくり馴染みますように。
それぞれの一日を。


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